明治期右翼組織の中心、玄洋社の巨頭杉山茂丸の長男として、明治二二年、福岡市に生まれた。幼名を直樹といい、幼少より謡曲、能に親しみ、九州日報辞職後は喜多流謡曲教授のかたわら、書きたいものを書く奔放な作家活動に入った。処女作としては、九州日報入社後、紙上に童話『白髪小僧』等発表したが、本格的な小説は大正一五年「新青年」に寄稿した『あやかしの鼓』といわれている。夢野の作品は、父の影響、ポー、ルヴェルの〈怪奇と恐怖〉への興味もあって、冥界との交感、自己世界の開示が基軸となっており、大長篇『ドグラ・マグラ』は、赴く処の野心的作品となった。
太字作品や★★★★★が特におすすめです。
夢野久作 押絵の奇磧
著者: 夢野久作
ゆめの・きゅうさく
発表: 1926年 ~ 1933年
発行所: 角川文庫
カバーアート:米倉斉加年
価格: 340円
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夢と現実を巧みに融和し、異色の作品を遺した夢野久作—その土着性と戦慄の文学は、魂からほとばしった彼の情念がそのまま文字に残されたものである。没後三十余年、ようやく彼の作品の再評価の機運がもたらされた表題の作品をはじめ、作者一流の話術がもっともよくその本領を発揮した代表作三篇を収録。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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氷の涯 | 1933 | 日本人、支那人、白系ロシア人、赤軍スパイが暗躍する国際色豊かな満州を舞台にした公金横領事件。大陸的スケールがうらやましい。 |
押絵の奇磧 | 1929 | これも言わば精神病理に属する話。真相は闇の中。 |
あやかしの鼓 | 1926 | 呪いの鼓に魅せられた者たち。時代を越えて繰り返される因縁の物語の妖しさ。 |
夢野久作 ドグラ・マグラ ★★★★★
著者: 夢野久作
ゆめの・きゅうさく
発表: 1935年
発行所: 教養文庫
カバーアート:田村文雄
価格: 800円
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昭和十年一月、書き下ろし自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成し、”日本一幻魔怪奇の本格探偵小説”とうたわれた、歴史的一大奇書。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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ドグラ・マグラ | 1935 | 言わずと知れた、明治生まれの怪奇幻想文学の究極体。その時代を大きく先駆けた異常心理的なテーマは、十分現代でも通用する。最初から最後まで、結局一人のキxガイの妄想かもしれないので、何が本当に起こったことで、何が真実かは誰にもわからない。著者の精神異常者(というか、むしろ精神病患者)への執着ぶりは、異常者と紙一重だ。 ・記憶は遺伝する。 ・その記憶情報は細胞レベルで保持されている。 ・そのおかげで、胎児も夢を見ることができる。 という、もっともらしい理論付けも興味深い。 一生に一度読んで損はない作品です。 |
夢野久作 人間腸詰
著者: 夢野久作
発表: 1929年 ~ 1936年
発行所: 角川ホラー文庫
カバーアート:田島照久
価格: 667円
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明治の末、渡米した大工のハル吉は、あるアメリカ人の屋敷に招かれる。秘密の錠前作りの依頼を断った彼が見せられた光景は、想像を絶する地獄だった……。夢と現実が妖しく交錯する幻想世界。夢野文学が描き出す、おぞましいばかりの狂気・怨念・異常心理の数数。表題作を含む全10編。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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人間腸詰 | 1936 | セントルイス万博の裏で、日本人大工が大冒険。 | |
焦点を合わせる | 1932 | これまた海外の日本人学生が、密輸から国際的陰謀へと繋がる大冒険。 | |
空を飛ぶパラソル | 1929 | 警察に良いように操られる新聞記者。 | |
眼を開く | 1935 | 雪道で行方不明だった郵便局員の死体は、穏やかなものだった。 | |
童貞 | 1930 | 本物の音楽は都会の喧騒の中にある。 | |
一足お先に | 1931 | 失った足の幻覚体験が、無意識の殺人へと繋がったか。 | |
狂人は笑う | 1932 | 「崑崙茶」は麻薬のように性的高揚をもたらすが、同時に中毒になりやすい。 | |
キチガイ地獄 | 1932 | どこまでが本当かわからない、精神病患者の告白。 | |
冗談に殺す | 1933 | 完全犯罪を企てた男は、実際、妻を殺害したらしい。 | |
押絵の奇蹟 | 1929 | 親の強い恋愛感情は遺伝して、子供に受け継がれるという話。 |
夢野久作 少女地獄
著者: 夢野久作
発表: 1930年 ~ 1936年
発行所: 角川文庫
カバーアート:米倉斉加年
価格: 500円
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可憐なる美少女”姫草ユリ子”は、すべての患者、いな接触するすべての人間に好意を抱かせる、天才的な看護婦だった。その秘密は、彼女の病的な虚言癖にあった。一つのウソを支えるために、もう一つの新しいウソをつく。無限に増幅されたウソの果ては、もう、虚構世界を完成させるための自殺しかない。そして、その遺言状もまた……。〈夢幻〉の世界を華やかに再現する夢野久作。書簡体形式で書いた表題作ほか、男女の宿命的断層を妖麗に描いた「女坑主」「童貞」を収めた傑作集。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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少女地獄 | 1936 | 「何でも無い」「殺人リレー」「火星の女」の3篇からなる。どれも酷い嘘つき女の物語。 | |
童貞 | 1930 | 本物の音楽は都会の喧騒の中にある。 | |
けむりを吐かぬ煙突 | 1935 | 未亡人のスキャンダルに気づいた新聞記者は、金を強請ろうとするが。 | |
女坑主 | 不明 | 炭鉱の女坑主は、イギリスとイタリアの戦争を煽るために、ダイナマイトを届けたいという青年に協力する。 |
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