法月綸太郎(のりづき・りんたろう)
1964年10月15日松江市に生まれる。京都大学法学部卒業。在学中は京大推理小説研究会に所属し活躍。作家デビューは「密閉教室」。ついで著者と同姓同名の名探偵が登場する「雪密室」を刊行し、「ミステリ界の殉教者」としての道を辿り始める。本書に「ボーナス・トラック」として収められた『……GALLON SOF~』は、その道程の精神的な記録の結晶である。
太字作品や★★★★★が特におすすめです。
法月綸太郎 密閉教室
著者: 法月綸太郎
のりつきりんたろう
発表: 1988年
発行所: 講談社
価格: 1400円
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本書は、法月綸太郎のデビュー作「密閉教室」のオリジナル版である。教室にあるべきはずの48の机と椅子がすべて消え、代りにコピイされた遺書と級友の死体だけが残されていた。しかも教室はガムテープで周到に目張りされ、密室と化していたのだ。受験校三年の工藤順也は熱狂的な探偵小説の愛好家だ。自殺か他殺か。彼が動くにつれ事件は昏迷度を深め、ついに彼がたどり着いた苦い真実とは…。本格ミステリと青春小説の美しくも哀切なキメラ。「ノーカット版密閉教室』ハードカバー版より抜粋
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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密閉教室 | 1988 | さすがに処女作だけあって出来はイマイチとしても、その意気込みは良し。 |
法月綸太郎 頼子のために
著者: 法月綸太郎
のりつきりんたろう
発表: 1990年
発行所: 講談社文庫
カバーアート:辰巳四郎
価格: 590円
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「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて相手を刺殺、自らは死を選ぶという手記を残していた。手記を読んだ名探偵法月綸太郎が、事件の真相解明にのりだすと、やがて驚愕の展開が!精緻構成が冴える野心作。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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頼子のために | 1990 | 単なる本格ミステリというよりは、よりメッセージが込められていて、それが悲しすぎるのが残念。 |
法月綸太郎 法月綸太郎の冒険
著者: 法月綸太郎
発表: 1990年 ~ 1992年
発行所: 講談社
カバーアート:辰巳四郎
価格: 760円
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なぜ犯人は死刑執行の当日、首を縄に差し入れた死刑囚を殺さなければならなかったのか。なぜ犯人は図書館の蔵書の冒頭数ページを切り裂くのか、それもミステリーばかり。なぜ男は恋人の肉を食べたのか……
帯、カバー、裏表紙等から引用
…。異様な謎につつまれた怪事件に太郎の明晰かつアクロバティックな推理が冴えわたる!
著者のことば
はじめに名探偵ありき。私にとって、本格ミステリの最大の謎は、名探偵という「装置」謎と論理の結節点にいるはずなのに、本格ミステリの定義からいつも巧妙にすり抜けてしまうとらえがたい存在の不可解さに尽きるのです。私はこの「装置」が機能停止して、そのメカニズムをさらけ出す瞬間に立ち会いたい。性懲りもなく、法月綸太郎という主人公を酷使し続けるのは、そのためです。
タイトル | 発表 | 感想 |
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死刑囚パズル | 1992 | 死刑囚は執行直前に、わざわざ毒殺された。 |
黒衣の家 | 1990 | 葬儀の後、変化した婆さんは、農薬入りの味噌汁で殺された。 |
カニバリズム小論 | 1991 | 人が人を食うのは、文化的な背景だけではない。 |
切り裂き魔 | 1990 | 図書館のミステリー本で、一部切断した上で、犯人の名前を書くという事件が多発。 |
緑の扉は危険 | 1991 | 重力によって密室になった部屋で殺された蔵書家。 |
土曜日の本 | 1991 | 50円玉20枚を千円に両替する奇妙な男。 |
過ぎにし薔薇は… | 1992 | 失読症は本読みで克服できるか。 |
法月綸太郎 法月綸太郎の新冒険
著者: 法月綸太郎
発表: 1996年 ~ 1999年
発行所: 講談社
カバーアート:辰巳四郎
価格: 880円
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全編、これぞ本格推理! 「あの男」がついに最前線へカムバック!! アヴァンギャルドな謎。アクロバティックな推理。 アメイジングな解決。そして、胸を打つ余韻。あらゆるページに本格ミステリの現在と未来が宿る!法月綸太郎を超えるのは、やはり法月綸太郎だった!!
帯、カバー、裏表紙等から引用
著者のことば
長らくお待たせしました。名探偵・法月綸太郎シリーズの最新短編集をお届けします。ここに収録した作品は、いずれも百枚を超える分量があり、その枚数に見合った構成を組み立てるのに苦労した作品ばかりです。『雪密室』で法月探偵が初登場してから、早いものでもう十年。今回は初心に返って、逃げも隠れもしない本格、正攻法のパズラーを書くことに腐心しました。《知恵と工夫のエンタテインメント》、それが本書のテーマです。
タイトル | 発表 | 感想 |
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背信の交点 | 1996 | 列車内で連続する自殺事件の謎。 |
世界の神秘を解く男 | 1997 | 出演する女優目当てで、心霊番組へ出演したのが運の尽き。 |
身投げ女のブルース | 1998 | 占い師殺害容疑者として見られていた女が、飛び降り自殺を企てた。 |
現場から生中継 | 1998 | TV中継映像とケータイを駆使して、アリバイ工作。 |
リターン・ザ・ギフト | 1999 | 図書館の本で、犯人像を見誤させる方法。 |
法月綸太郎 パズル崩壊
著者: 法月綸太郎
発表: 1992年 ~ 1995年
発行所: 講談社
カバーアート:辰巳四郎
価格: 760円
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男女はいかにして切り裂かれ、「雌雄同体の一個の生物の亡骸」となって密室に残されたのか?一本の「懐中電灯」が、完全犯罪を崩壊させる陥穽となったのはなぜか? 選び抜かれた八つの作品が、本格ミステリの形式に鋭角の亀裂を走らせる!本格推理の嫡子、法月綸太郎の新世紀を予感させる、傑作第二短編集。
帯、カバー、裏表紙等から引用
著者のことば
この本が出てから、まだ二年しかたっていないのに、「パズル崩壊」と「フーダニット・サバイバル」という造語が、これほど切実な響を伴って追ってこようとは思いもしなかった。新勢力の台頭は、文化大革命期の紅衛兵のように荒荒しくて残酷だ。私は自らを「下放」する。ミステリーの伝統と技術を根絶やしにしないために。先人たちの偉業の記憶を語り継ぐために。そして、もう一度、不毛の荒野に新しい種をまこう。
タイトル | 発表 | 感想 |
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重ねて二つ | 1992 | グロテスクな死体は、不可能犯罪をほのめかす過剰演出。 |
懐中電灯 | 1994 | 捜査を攪乱しようとしたら、逆にはまってしまった。 |
黒のマリア | 1995 | 「呪いの絵」なんてものは、ない。 |
トランスミッション | 1994 | 小説家が誘拐事件に巻き込まれたのは、偶然ではなかった。 |
シャドウ・プレイ | 1995 | 自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬという伝説を悪用する。 |
ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか? | 1994 | リュウ・アーチャーとフィリップ・K・ディックのパロディ。 |
カット・アウト | 1995 | 絶縁したのは、親友の芸術を誤解したからだ。 |
GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP | 1995 | 作品が私小説に近いという、編集者の批判は本当か? |
法月綸太郎 ノックス・マシン
著者: 法月綸太郎
発表: 2008年 ~ 2013年
発行所: 角川書店
カバーアート:遠藤拓人
価格: 1650円
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内容(「BOOK」データベースより)
帯、カバー、裏表紙等から引用
上海大学のユアンは国家科学技術局からの呼び出しを受ける。彼の論文の内容について確認したいというのだ。その論文のテーマとは、イギリスの作家ロナルド・ノックスが発表した探偵小説のルール、「ノックスの十戒」だった。科学技術局に出頭したユアンは、想像を絶する任務を投げかけられる…。発表直後からSF&ミステリ界で絶賛された表題作「ノックス・マシン」、空前絶後の脱獄小説「バベルの牢獄」を含む、珠玉の中篇集。
タイトル | 発表 | 感想 |
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ノックス・マシン | 2008 | タイムマシンでノックスに会いにいった中国人が、ルールの変更を申し出る。ミステリーではない。 |
引き立て役俱楽部の陰謀 | 2009 | ワトソン博士ら脇役たちが、「そして誰もいなくなった」を問題視し論争。 |
バベルの牢獄 | 2010 | 原稿用紙の中に生きている生命体が、ワームホールを発見する。SF。 |
論理蒸発ーノックス・マシン2 | 2013 | 「読者への挑戦」が火災を起こす。 |
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