偉大なるB級作家。日本のミステリはこの人を置いて語れない。初期はトリッキーな短篇中心で、中期は通俗長編、後期は少年物が多い。
同じパターンの使い回しが結構目立つ。翻案物および外国作品のトリックを借用したものも、けっこうある。男色趣味が隠し切れずにチラチラ見える。
角川文庫版では、宮田雅之氏による華麗な切り絵に注目。
キーワード:
猟奇 エログロ ネチネチ ムチムチ
八幡の薮知らず 見世物小屋 不具者 パノラマ 白髪 姦夫姦婦
捕縛 細引き
名探偵明智小五郎 文代さん 小林少年 堀越警部
太字作品や★★★★★が特におすすめです。
江戸川乱歩 悪魔の紋章
著者: 江戸川乱歩
発表: 1931年 ~ 1937年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
無一文からたたき上げて資産を築いた富豪の家に、一家皆殺しの恐怖の予告。不安に怯えていた次女が突然、失踪。蝋人形のように死化粧されて発見された。現場に残された犯罪史上初の<三重渦状>の怪指紋。四日後の葬儀の日、黒く無気味に長女の頬に捺された怪指紋はつぎの殺人を暗示して…。
帯、カバー、裏表紙等から引用
復讐にこりかたまった殺人鬼。名探偵明智小五郎の冴えた追及の手が伸びる。江戸川乱歩の復讐怪奇物の大傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
悪魔の紋章 | 1937 | 死体陳列、八幡の薮知らず、殺人芝居のぞき、生埋め、男装の麗人などエログロ猟奇満載の一大活劇。 |
石榴 | 1934 | 人間すりかえ? |
鬼 | 1931 | 汽車がらみ。 |
江戸川乱歩 暗黒星 ★★★★★
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1939年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
まっ赤に染まった浴槽の中であおむけに浮かぶ全裸の女。眼を抉られ、心臓部から鮮血が噴き出す凄惨な死体に、人々は思わず顔をそむけた。
帯、カバー、裏表紙等から引用
突然、大富豪伊志田家の家族を襲った血の惨劇は、悪魔のような犯人が奏でる殺人交響曲の序章だった。明智小五郎をあざ笑うように起こる第二、第三の殺人。だが、面子にかけて犯人を追う明智は凶弾に倒れてしまった……。
怪奇とロマンあふれる江戸川乱歩の傑作本格推理。他4篇収録。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
暗黒星 | 1939 | 隠し部屋といのはフェアではない。よくある復讐劇。ブラック・ホールが邪悪といわれても。 |
お勢登場 | 1926 | 世に悪女の絶えることなし。情けない亭主が悪女をつくるのか? |
目羅博士 | 1931 | 月光の下の完全犯罪vs完全犯罪返し。 |
木馬は廻る | 1925 | ミステリーでもファンタジーでもない小品。ちょっとプロレタリア。 |
幽鬼の塔 | 1939 | 翻案もの。「サンフォリアン寺院の首吊人」参照。 |
江戸川乱歩 一寸法師 ★★★★★
著者: 江戸川乱歩
発表: 1923年 ~ 1926年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
私は確かに見た! からだ全体が頭と胴でできているような、あの醜怪な一寸法師。その懐からころがり落ちたものは、断末魔の表情で空をつかんだ青白い人間の手首であった。数日前から行方不明の某令嬢の死体の一部か?
帯、カバー、裏表紙等から引用
名探偵明智小五郎の追及をあざわらうかのような奇妙な一寸法師の行動、からみ合う陰湿な人間関係。バラバラ殺人事件の謎を追う乱歩の快作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
一寸法師 | 1926 | また不具者に悪役を押しつける、本格物としても通俗物としても半端な怪作。 |
人間椅子 | 1925 | 女性だったらとくに気色わるいでしょう、これは。こういう名前のハードロック・バンドがあった。 |
二銭銅貨 | 1923 | 初期の純和風暗号物。 |
闇に蠢く | 1926 | 全著作中、一、二を争うグログロ度のスリラー。食前は避けよう。 |
夢遊病者の死 | 1925 | 逃走の切迫感もさりながら、貧乏家庭のやるせなさに心打たれる。 |
江戸川乱歩 芋虫
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1937年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
その物は、無気味な爬虫類の格好で胴体を波のようにうねらせ、深い死の淵に向かってジリジリうごめいていた。
帯、カバー、裏表紙等から引用
——華々しい戦功をあげながらも、砲弾の破片で四肢を吹きとばされ、耳も口もつぶされて、まるで、黄色の芋虫のようにぶざまに変わりはてた須永鬼中尉。だが、看護に懸命な貞淑だった妻の心に巣くっていたいまわしい嗜好が突然、爆発! 自由を失ったあわれな片輪者の夫のからだをもてあそぶ、脂ぎった三十女の醜怪な生活の果ては……。江戸川乱歩の代表傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
芋虫 | 1929 | グロテスクの極みの幻想短篇。これでは軍当局によって発禁処分にされても当然だろう。 |
赤い部屋 | 1925 | またまた死ぬ程退屈している人達の話。完全犯罪のいろいろ。 |
幽霊塔 | 1937 | 翻案の翻案。冒険物語としてグイグイ読ませる。もうちょっと暗号に凝ってほしかった。 |
踊る一寸法師 | 1926 | ありそうでなかったホラー小編。また見世物小屋の小人。 |
江戸川乱歩 陰獣 ★★★★★
著者: 江戸川乱歩
発表: 1928年 ~ 1929年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
——暗闇の中で,息を殺して、唖のようにだまり返ってジッとうかがっている陰獣の目。私は、お前の影になり切っている。たえまなく、お前を凝視しているのだ。
帯、カバー、裏表紙等から引用
幸せをつかんだ女のもとに、捨てた男の執念の脅迫状。その直後、隅田川に浮かんでいた夫の腐乱死体。熟れた女の白い肌にきざまれたミミズ脹れの鞭あとの謎は……。
驚くべき巧妙なトリックと強烈なサスペンス。複雑な犯罪の謎を解きくずす江戸川乱歩の最高傑作!
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
陰獣 | 1928 | 一人?役のトリックよりもSM描写が光る。作者の分身である大江春泥を、えらく厭らしく表現しているのはご愛敬。 |
孤島の鬼 | 1929 | 現在では自主規制にひっかかって出版不可能と言えるほどの、不具者に対する偏見・差別のオンパレード。”秀ちゃんの日記”は読む者の鳥肌を立たせる。ホモでなくともその気になってくる同性愛描写が秀逸。 |
江戸川乱歩 黄金仮面
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1930年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
——怪物は彼女のふくよかな胸をねらって、短剣をふりかぶった。もがきにもがく手が、近々とのしかかる怪物の顔を、はっしと打ったその瞬間、ポロリと落ちた黄金仮面! 怪物はアッと叫んで、す早く仮面を被りなおしたが、その正体はまざまざと……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
ゾッとするほど無表情な金属製の顔、シューシューという妙な笑い声、めくれ上がった三日月型の唇からしたたり落ちる血。古美術、国宝ばかりを狙う怪盗に名探偵明智小五郎の鋭い挑戦!
妖しい興奮をよぶ乱歩の最高傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
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黄金仮面 | 1930 | 巨人対怪人! ああ、なんという荒唐無稽な大活劇であろう。A・Lを出すのは反則だ。 |
何者 | 1929 | 隠された動機もの。最初犯人は鳥かと思いました(光りものを盗っていくから)。 |
D坂の殺人事件 | 1925 | 記念すべき明智のデビュー作だが、金田一ほど強烈な印象はない。 |
心理試験 | 1925 | 過ぎたるは及ばざるがごとし。自信を持つのもほどほどに。 |
江戸川乱歩 影男
著者: 江戸川乱歩
発表: 1955年 ~ 1959年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
——長いにらみ合いの後,全裸の二青年は恐ろしい勢いで突進した。肉弾がはげしくぶつかり、突き合い殴り合い、そのうち、鮮血が流れはじめた…うす暗い地下室で行われた秘密の狂態。血だらけの美青年をみつめて興奮に酔う、上流婦人たちの飢えた陰湿な目,目、目。
帯、カバー、裏表紙等から引用
人生の裏街道を歩きまわり、弱みをもつ富裕階級をユスッて大金をせしめる”影男”とは何者? いくつもの偽名をつかいわけ、殺人方法に鮮やかな才能をみせる奇想天外な犯罪小説!
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
影男 | 1955 | 犯罪小説かと思うと、またまた地下パノラマ帝国の妄想が膨らんできて、最後に明智がチラッと出て来て解決してしまう。この頃となると、もはやネタぎれか? |
ぺてん師と空気男 | 1959 | プラクティカル・ジョークというのは、気真面目で洒落が通じにくい日本人にはなじまないのでは?。一時期流行った”どっきりカメラ”を思いだす。最高のぺてん師の行きつく先はやはりこの職業か。 |
江戸川乱歩 吸血鬼
著者: 江戸川乱歩
発表: 1924年 ~ 1930年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
雨続きに増水して、無気味ににごる川面。岩角にぶち当たってすりむけたのか、顔全体がグチャグチャに崩れ、醜くふくれ上がった溺死体! 死後十日以上経過している。 ——恋に狂った男たちの奇妙な毒薬決闘の果て、<死の淵>へ誘いこまれた哀れな男の末路?
帯、カバー、裏表紙等から引用
艶やかな未亡人をめぐって、つぎつぎに起こる怪事件。 火傷で鼻が欠け、唇のない残忍な男と明智小五郎の鮮やかな推理闘争。 多彩なトリック、複雑な謎、乱歩の怪奇推理の決定版。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
吸血鬼 | 1930 | 殺されても文句の言えない女であるとしても、この復讐はやりすぎ。木念仁の明智もついに文代さんとゴールインして、めでたし、めでたし。 |
一人二役 | 1925 | やはり妻の方が賢いのか。こんなふうに冗談で済めばいいが。 |
双生児 | 1924 | 指紋の罠。 |
江戸川乱歩 蜘蛛男
著者: 江戸川乱歩
発表: 1926年 ~ 1929年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
好みの女ばかりをあさる残虐な色情狂<青ひげ>の出現! それは、相手の油断を見すかして飛びかかり、食い殺してしまう毒蜘蛛に似ていた。
帯、カバー、裏表紙等から引用
——借り手の付かない不吉なビルの一室で、わずかな2日間だけ”美術商”を開いた紳士の妙な行動と謎の求人広告? その直後、石膏細工の中から、腐乱した女性の死体が露出して……。
他人の血を吸う毒蜘蛛の魔糸、意表を衝くトリック、猟奇殺人事件に鋭く挑戦する本格推理小説の最高傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
蜘蛛男 | 1929 | のちのち使い回される、犯罪の天才のパターン。どうも「悪魔の紋章」とカブッてしまう。狙われる女の特徴は乱歩のタイプか?。 |
湖畔亭事件 | 1926 | 覗き方にもいろいろある。ややハッピーエンド。 |
江戸川乱歩 黒蜥蜴
著者: 江戸川乱歩
発表: 1933年 ~ 1934年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
黒ずくめのイブニング・ドレスに豊満なからだをつつむ暗黒街の女王”黒とかげ”。バラのように上気した左腕には、とかげの刺青が妖しくうごめいている。ダイヤ<エジプトの星>に魅せられた彼女が、宝石商令嬢の誘拐を計画して、名探偵明智小五郎に鮮やかに挑戦。かたき同士がほのかに愛情を感じ合いながら、神出鬼没の追う者と追われる者のトリッキイな知恵の戦い!
帯、カバー、裏表紙等から引用
身の毛をそっと逆なでしたような奇妙な快感、乱歩作品の決定版。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
黒蜥蜴 | 1934 | 妖しくも美しい暗黒街の女王。ときどきボクと言うのもまた可愛らしい。好敵手としてシリーズ化して、明智を悩ましつつ虜にして欲しかった。死ぬまでに一度は三島由紀夫の戯曲版を見よう。 |
妖虫 | 1933 | 今度はサソリだ!この動機でここまで恨むのは現代でも考えられない。 |
江戸川乱歩 化人幻戯
著者: 江戸川乱歩
発表: 1926年 ~ 1956年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
元侯爵家の美貌の夫人に思いを寄せる二人の青年。そのうちの一人が、ある日、熱海の切り立った断崖から墜落死した! 自殺か? 他殺か? 混迷する捜査陣は、名探偵明智小五郎のヒントにより、残る一人の青年に殺人容疑を深めていった。だが、尾行していた刑事の一瞬の油断から、彼もまた密室の中で殺害された……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
奇抜なトリックと複雑な謎解きの醍醐味を堪能させる、本格推理小説の最高傑作!
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
化人幻戯 | 1954 | ある意味で最も凶悪かつ怜俐な犯人で始末に負えない。。明智も五十を過ぎて変装して頑張っている。 |
堀越捜査一課長殿 | 1956 | 声を変えるのは、もっと難しい気がするが。 |
防空壕 | 1955 | 人間というものは、生命の危機に瀕したとき、種を保存しようとする本能によって性交したくなるそうだ。 |
断崖 | 1950 | また姦夫姦婦の話だが、女の方が一枚上手。 |
凶器 | 1954 | 実は最初に読んだとき、この数学の問題で考え込んだ。 |
灰神楽 | 1926 | とっさに考えた計画は後で必ず綻びが出て来るという一例。事前に入念に準備しよう。 |
江戸川乱歩 三角館の恐怖
著者: 江戸川乱歩
発表: 1915年 ~ 1955年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
深夜、三角館とよばれる西洋館に一発の銃声が響いた。くぐもったような低い銃声であった。老人は心臓を撃たれ、即死していた……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
暗く広く、陰気な墓場のような二等辺三角形のいびつな建物。その中では、双生児の老人を含む二組の家族のただれた欲望がうごめいていた。十数億の財産の相続をめぐって起きた第一の殺人!不安をかきたてる前奏曲か、ふいに訪れ消えた来客の正体は? 意表をつくトリックと強烈なサスペンス、江戸川乱歩の本格推理の決定版。
タイトル | 発表 | 感想 |
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三角館の恐怖 | 1951 | 翻案物。もはやこの頃になるとネタ切れか? |
算盤が恋を語る話 | 1925 | ふつう気づかないって、こんなの。 |
月と手袋 | 1955 | 追い詰める刑事がネチネチといやらしい倒叙サスペンス。 |
モノグラム | 1926 | 思い出は美しすぎて…。 |
火縄銃 | 1915 | 古典的物理的トリックである処女作。 |
江戸川乱歩 地獄の道化師
著者: 江戸川乱歩
発表: 1924年 ~ 1939年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
踏切の中で起こった衝突事故!追突したオープンカーから転がり落ちた美しい裸婦の彫像が、驀進して来た電車に撥ねられた。腰部にパックリと開いた石膏の割れ目。しかし、意外にもそこから鮮血が……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
赤地に白い水玉模様の衣装に身を包み、三日月型に裂けた大きな唇に無気味な笑いを浮かべる「地獄の道化師」。残忍な猟奇殺人を重ねる犯人に、冷静な推理で対決する名探偵明智小五郎。
抜群のトリックで魅了する本格的推理の傑作!
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
地獄の道化師 | 1939 | 凄絶な復讐計画。なぜ道化師なのかが鍵。中心人物の男も最後に殺すべき。後味悪し。 |
猟奇の果 | 1930 | 超常現象のような導入部に引き込まれるが、途中から白コウモリ団が出て来るあたりからいつもの冒険活劇調に。 |
二廃人 | 1924 | 読後、不安のまま放り出される初期の夢遊病もの。 |
江戸川乱歩 十字路
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1957年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
愛人のアパートに居るところと突然、妻に踏み込まれ、男は動転した。逆上した妻が短剣を振りかざして愛人に襲いかかる。必死にそれをとめようとした彼は、夢中で妻の首にタオルを巻きつけ、思いあまって殺してしまった!
帯、カバー、裏表紙等から引用
恐ろしい殺人の罪から逃れる方法—それは妻を自殺に見せかけることだ。彼は考え抜いた計画を実行した。ミスは無かったはずだった。だが、何故か彼の耳に、追いすがる刑事の足音が次第に大きく響いて来た……。
犯罪者の微妙な心理を描く本格推理の傑作、ほか7篇を収録。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
十字路 | 1955 | 20年ぶりに読み返し、気が付いたら犯人と同世代になっていたなあと思いつつ、これほど簡単に殺人を繰り返す犯人に対して乱歩はえらく同情的で甘い。 |
畸形の天女 | 1953 | 変身願望というよりはロリコン趣味が強く感じられる小品。 |
妻に失恋した男 | 1957 | 一点のトリックのためだけの小品。 |
幽霊 | 1925 | 死んだはずの男が! 自分だったらひっかからないような気がするが…。 |
覆面の舞踏者 | 1926 | 疑惑と嫉妬の黒雲がもくもくと。 |
日記帳 | 1925 | こういう超奥手の恋愛の時代もあったということで。 |
接吻 | 1925 | 乱歩の女性不信の一面が垣間見られる小品。 |
悪霊 | 1933 | 未完ですが、誰か続きを書いてくれないものだ。 |
江戸川乱歩 探偵小説の謎
著者: 江戸川乱歩
発表: 1956年
発行所: 現代教養文庫
カバーアート:阿部隆夫
価格: 280円
タイトル | 発表 | 感想 |
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探偵小説の謎 | 1956 | 「類別トリック集成」を読みやすくしたエッセイ集。ネタばれ多し。かなりミステリを読み込んだ人限定。 |
江戸川乱歩 大暗室
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1936年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
頑丈な木枠に縛りつけられた娘の豊満な胸をめがけて、きっ先が鋭い刃物になった大きな振り子が迫ってくる。ついに振り子がその娘の乳房をえぐった! と思った瞬間、うすれゆく意識の中で、彼女は無気味な悪魔の笑い声を聞いた。
帯、カバー、裏表紙等から引用
殺された父の復讐と恋人の危機を救うため、凶悪な殺人鬼に対決する、青年有村清。だが、そのゆくてには恐ろしい奸智にたけた敵の罠が……。
強烈なサスペンスでつづる江戸川乱歩の傑作長編。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
大暗室 | 1936 | 地下帝国の大悪人と正義の騎士の対決。親の因果が子に報い、悲劇のヒロインもからむ、紙芝居風大冒険。妄想は抑えぎみで、地下帝国はグロ度においては、「パノラマ島奇談」に劣る。 |
毒草 | 1926 | 身近な軽いホラー。 |
百面相役者 | 1925 | 言われてみれば、よくありそうなホラー。 |
疑惑 | 1925 | 疑心暗鬼。フロイトの物忘れの学説の参考にもなるサイコ・ミステリ(?)。 |
鏡地獄 | 1926 | こんな装置があったら、ぜひ試してみたいと思わせる作品。 |
江戸川乱歩 白髪鬼
著者: 江戸川乱歩
発表: 1923年 ~ 1931年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
——わしは恐ろしい肉食獣になりはてていた。墓穴の底で、棺のふたをこじ開け、まず指先にふれたものは、肉が腐って抜け落ちた髪の毛、ゴツゴツした頭蓋骨だった。死体に寄生した蛆虫さえも死に絶えてしまっていた。
帯、カバー、裏表紙等から引用
信じ切っていた友の奸計にはまり、愛する妻にも裏切られた一匹の白髪の鬼。地獄の底からよみがえった復讐鬼乱歩の伝奇小説の最高傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
白髪鬼 | 1931 | 翻案物。陰湿な復讐にもかかわらず、妙にドライな雰囲気。こんなお人好しでは騙されても仕方がない。ラスト・シーンは美しくさえある。 |
盗難 | 1925 | 制服に弱いのは日本人だけか? |
一枚の切符 | 1923 | 一回読んだだけでは、よくわからない。 |
人でなしの恋 | 1926 | 怖いのは人形ではなく、むしろ人間の方。 |
恐怖王 | 1931 | 結局、ゴリラ男とは何だったのか。やや失敗作。 |
江戸川乱歩 パノラマ島奇談 ★★★★★
著者: 江戸川乱歩
発表: 1926年 ~ 1943年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
M県南端にひっそり浮かぶ謎めいたパノラマ島の夜空に、華麗に繰り広げられた見事な花火の饗宴。その真下では全裸の男女が微妙にからみ合い、男の両腕が女の細首をしめたいた。やがて女の青ざめた指が弧を描き、空をつかんだ時、彼女のすき通った鼻孔から糸を引くように真赤な血のりが……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
一介の貧乏書生が、全くの偶然を利用し、企てた恐ろしい犯罪。ただ一人秘密を知ってしまった女に仕掛けられた罠は?
悪魔に魅入られた男の凄まじい幻夢を描く江戸川乱歩の傑作!
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
パノラマ島奇談 | 1926 | 本領発揮の大妄想小説。現代で会員制で興行すればけっこう儲かるのでは? 殺人事件はおまけ程度。 |
偉大なる夢 | 1943 | 太平洋戦争中の戦意高揚作品。読めば読むほど白ける。 |
盲獣 | 1931 | 男は目で興奮するものと言うが、触るだけというのも意外といいかも。 |
江戸川乱歩 魔術師
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1930年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
肌寒い晩秋の隅田川——橋の上にたたずんでいた人たちが、突然、悲鳴をあげた。水面には、凄まじい形相をした人間の生首が……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
莫大な資産を持つ宝石王の命を狙う凶賊”魔術師”。不敵にも、彼は殺人予告をし、無気味な横笛の音とともに完璧な警戒体制の中を煙のように出没する。ついに第一の惨劇が起こった!
全知能をふりしぼり強敵に対決する明智小五郎の活躍、本格推理小説の傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
魔術師 | 1930 | またも因果応報の冒険活劇であると同時に、中年の域に達した明智と薄幸の少女文代さんが出会う、恋物語の始まりでもある。 |
虫 | 1929 | 徐々に狂気に蝕まれていくストーカーの様が不気味。どうしよう、どうしようと焦る気持がよくわかる。 |
火星の運河 | 1926 | 幻想的習作。 |
指 | 1925 | 梅図かずおの漫画で見たような恐怖小品。 |
白昼夢 | 1925 | 後に他の長編で多様される死体陳列のホラー。 |
黒手組 | 1925 | 足跡隠しと漢字暗号。 |
江戸川乱歩 屋根裏の散歩者
著者: 江戸川乱歩
発表: 1923年 ~ 1934年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
雷のような鼾をかいて寝ている男の口に、おれは天井の節穴から毒液を注ぎ込んだ。ぞくっとするような快感が背筋を走る。これこそおれの最高の遊びなのだ!
帯、カバー、裏表紙等から引用
世の中のどんなものにも全く興味を失った男が、たった一つ見つけた秘かな楽しみ。それは屋根裏の散歩だった。他人の前では見せない、人間のさまざまな醜態を眺めて、ほくそ笑む無気味な男。変態生活者のみだらな快楽、完全犯罪の可能性を追求したした乱歩の名作。ほか3篇を収録。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
屋根裏の散歩者 | 1925 | 子供のとき、真似して天井裏を探検したら確かに面白い。一度試してみよう。 |
人間豹 | 1934 | 「恐怖王」のゴリラ男と同じように正体がはっきりしない。小林少年は大活躍。あわや、因われの文代さんの運命やいかに! |
押絵と旅する男 | 1929 | 三等客車がよく似合うお伽話。 |
恐ろしき錯誤 | 1923 | 「赤い部屋」的な完全犯罪に対して、完全復讐は成功するか? |
江戸川乱歩 緑衣の鬼
著者: 江戸川乱歩
発表: 1925年 ~ 1936年
発行所: 角川文庫
カバーアート:宮田雅之
価格: 340円
宣伝文句
まっ白な三角洋館に浮かび上がった巨大な手の影。鋭い短剣を握ったその影が、真下と通りかかった若い女めがけて振り下ろされた。瞬間、女の口をついて恐怖の悲鳴が……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
美しい人妻をめぐり、連続して起こる残忍な殺人事件。緑色の衣服に身を包み、しわがれた声で無気味に笑う神出鬼没の犯人”緑衣の鬼”とは何者? 警察の必死の捜査を尻目に次の獲物を狙う犯人と素人名探偵との対決!
息づまるサスペンスと絶妙なトリック。乱歩が描く本格推理の傑作。
タイトル | 発表 | 感想 |
---|---|---|
緑衣の鬼 | 1936 | 翻案もの。 |
指環 | 1925 | ちょっとひねった極小品。落語風。 |
地獄風景 | 1931 | 「パノラマ島奇談」の続編というべき怪作。このような最後の方が飄々として爽やかだ。 |
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