アメリカ・マサチューセッツ州ボストンにて生まれた、ミステリーの創始者。欧州のゴシック・ホラーの影響を受けて、多数の怪奇・幻想作品を生み出した。その割にあまり金銭的には恵まれず、最後には酔っぱらって溝にはまって死んだ。後に傑作群だけを残した、大芸術家らしい。
この版では、わざとゴシックロマンの雰囲気を狙っているのか、あるいは原作が難解なのか、翻訳が古臭くて読みにくいのがマイナス。”ポオ”とか言っている段階で、ひと昔前の感がする。しかし現代語すぎるとまた、ちょっと違う気がするので、難しいところだ。
太字作品や★★★★★が特におすすめです。
宣伝文句
アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求したポオは、後世の文学に多大の影響を及ぼした。巧緻精妙をきわめる<鴉>の詩人としては、ボードレールに始まるフランス象徴詩派に決定的な影響を与え、比類のない短編小説の名手としては推理小説を創造し、怪奇小説・空想科学小説・ユーモア小説の分野にもいくたの傑作を残し、さらにまた透徹せる審美家批評家としては、詩論に文芸批評にすぐれた足跡を残し、その全貌は文字どおり天才としか呼び得ないほど広くかつ卓越したものである。天才と狂気が背中合せに棲むポオの小説世界を全四巻に完全収録した待望の全集!
帯、カバー、裏表紙等から引用
エドガー・アラン・ポー ポオ小説全集 1 ★★★★★
エドガー・アラン・ポー「ポオ小説全集 1」より引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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壜の中の手記 MS. Found in a Bottle | 1833 | 阿部知二 | 難破して南極へ漂流していった男の手記。 |
ベレニス Berenice | 1835 | 大岡昇平 | 気づいたら、死んだ美しい従妹の残したものがあった。 |
モレラ Morella | 1835 | 河野一郎 | 死んだ美しい妻の復活。 |
ハンス・プファアルの無類の冒険 The Unparalleled Adventure of One Hans Phaall | 1835 | 小泉一郎 | 気球で月まで行った男のホラ話。 |
約束ごと The Assignation | 1835 | 小泉一郎 | 美貌の候爵夫人と夢の国へ旅立つ、ヴェニスの貴族の青年。 |
ボンボン Bon-Bon | 1835 | 永川玲二 | 悪魔と契約しそこなった哲学者。 |
影 Shadow | 1835 | 河野一郎 | 通夜の席に現れた亡霊。 |
ペスト王 King Pest | 1835 | 高松雄一 | ペストの亡霊たちをやりこめる酔っ払い。 |
息の喪失 Loss of Breath | 1835 | 野崎孝 | 突然息をしなくなった男がさ迷い歩く。 |
名士の群れ Lionizing | 1835 | 野崎孝 | 名士の偉さは鼻の高さに比例する町での例外。 |
オムレット公爵 The Duc De L’omelette | 1836 | 永川玲二 | 死んだ公爵が、トランプで悪魔と勝負。 |
四獣一体 Four Beasts in One | 1836 | 高松雄一 | ローマ時代の東方の都市の情景。 |
エルサレムの物語 A Tale of Jerusalem | 1836 | 高松雄一 | ユダヤ教の儀式の準備をする男たちの落胆。 |
メルツェルの将棋差し Mealzel’s Chess-Player | 1836 | 小林秀雄、大岡昇平 | チェスを指すからくり人形の正体を論証する。 |
メッツェンガーシュタイン Metzengerstein | 1836 | 小泉一郎 | 反目する敵の居城の炎から生まれた、呪いの馬。 |
リジイア Ligeia | 1838 | 阿部知二 | 昔の恋人が死んだ妻に甦る。 |
鐘楼の悪魔 The Devil in the Belfry | 1839 | 野崎孝 | 正確を愛する町に混乱をまきおこす男。 |
使いきった男 The Man That Was Used Up | 1839 | 宮本陽吉 | 注目すべきスミス将軍を探して。 |
アッシャー家の崩壊 The Fall of the the House of Usher | 1839 | 河野一郎 | 妹の亡霊におびえる旧家の最後。 |
ウィリアム・ウィルソン William Wilson | 1839 | 中野好夫 | 正しい自分の投影と対決する悪太郎。 |
実業家 The Business Man | 1840 | 宮本陽吉 | おれはどうやって成功者になったか。 |
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エドガー・アラン・ポー「ポオ小説全集 2」より引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket | 1836 | 大西尹明 | だらだらと続く、南極までの漂流記。 |
沈黙 Silence | 1839 | 永川玲二 | 悪霊が神のような話をする。 |
ジューリアス・ロドマンの日記 The Journal of Julius Rodman | 1840 | 大橋健三郎 | まただらだらとした、ロッキー山脈横断記。 |
群衆の人 The Man of the Crowd | 1840 | 中野好夫 | 不審な老人を尾行したら…。 |
煙に巻く Mystification | 1840 | 佐伯彰一 | ちょっと暗号的な決闘の話。 |
チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか? Why the Little Frenchman Wears His Hand in a Sling | 1840 | 宮本陽吉 | コメディ映画の1シーンのような、口説きの失敗の場面。 |
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エドガー・アラン・ポー「ポオ小説全集 3」より引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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モルグ街の殺人 The Murders in the Rue Morgue | 1841 | 丸谷才一 | 世界初の探偵小説。この時点で、もう形式が確立している。つまり、その後の探偵小説はたいして進歩していない。 |
メエルトシュトレエムに呑まれて A Descent into the Maeltstrom | 1841 | 小川和夫 | 北欧の大渦での冒険譚。 |
妖精の島 The Island of the Fay | 1841 | 松村達雄 | 旅の島での詩的な妄想。 |
悪魔に首を賭けるな Never Bet the Devil Your Head | 1841 | 野崎孝 | また人間臭い悪魔が出て来る。むしろラストがすさまじいユーモア・ホラー。 |
週に三度の日曜日 Three Sundays in a Week | 1841 | 宮本陽吉 | 常識の盲点。ただし3人必要だ。 |
楕円形の肖像 The Oval Portrait | 1842 | 河野一郎 | 行き過ぎた画家の情熱。 |
赤死病の仮面 The Masque of the Red Death | 1842 | 松村達雄 | 死神は普通の顔をしてやってくる。 |
庭園 The Landscape Garden | 1842 | 松村達雄 | 莫大な遺産を相続し、芸術としての造園を試みた青年。 |
マリー・ロジェの謎 The Mystery of Marie Roget | 1842 | 丸谷才一 | 新聞記事で殺人事件の真相を探るミステリ。 |
エレオノーラ Eleonora | 1842 | 高橋正雄 | 死んだ美しい従妹への想いは、新しい恋で開放される。 |
告げ口心臓 The Tell-Tale Heart | 1843 | 田中西二郎 | 狂気による殺人と、狂気による発覚。 |
陥穽と振子 The Pit and the Pendulum | 1843 | 田中西二郎 | 異端審問の拷問の恐怖。 |
鋸山奇談 A Tale of the Ragged Mountains | 1844 | 小川和夫 | 時間と空間を越えた、インドへの白日夢。 |
眼鏡 The Spectacles | 1844 | 佐伯彰一 | 目が弱いばかりにドジを踏む青年。 |
軽気球夢譚 The Balloon-Hoax | 1844 | 高橋正雄 | 気球で3日で大西洋を横断したホラ話。 |
催眠術の啓示 Mesmeric Revelation | 1844 | 小泉一郎 | 催眠術を媒介にして、魂についての哲学問答。 |
早まった埋葬 The Premature Burial | 1844 | 田中西二郎 | 墓で蘇生する恐怖の数々。 |
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エドガー・アラン・ポー「ポオ小説全集 4」より引用
タイトル | 発表 | 訳者 | 感想 |
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黄金虫 The Gold Bug | 1843 | 丸谷才一 | 海賊の二重暗号を解読して宝探し。 |
黒猫 The Black Cat | 1843 | 河野一郎 | 妻殺しをばらす、猫の復讐。 |
長方形の箱 The Oblong Box | 1844 | 田中西二郎 | 船旅で、異常に大事にされる箱の謎。 |
不条理の天使 The Angel of the Odd | 1844 | 永川玲二 | 酔っ払いにのみ見える、漫画のような天使。 |
『お前が犯人だ』 ”Thou Art the Man” | 1844 | 丸谷才一 | ある殺人事件の真相を、犯人を罠にかけて自白させる。 |
ウィサヒコンの朝 Morning on the Wissahicon | 1844 | 野崎孝 | ある景勝地の川で出会った大鹿への想いは裏切られる。 |
シェヘラザーデの千二夜の物語 The Thousand-and-Second Tale of Scheherazade | 1845 | 高松雄一 | 殺されないために王の興味を惹きつづけた、姫の話は実話に基づいていた。 |
ミイラとの論争 Some Words with a Mummy | 1845 | 小泉一郎 | エジプトのミイラが目覚めて、文化の自慢合戦をする。 |
天邪鬼 The Imp of the Perverse | 1845 | 中野好夫 | 犯した殺人を告白したい誘惑。 |
タール博士とフェザー教授の療法 The System of Dr. Tarr and Prof. Fether | 1845 | 佐伯彰一 | 精神病院で新しく開発された治療法は効果があるのか。 |
ヴァルドマアル氏の病症の真相 The Facts in the Case of M. Valdemar | 1845 | 小泉一郎 | 臨終の直前に催眠術をかけられた患者が、死後も行き続ける。 |
盗まれた手紙 The Purloined Letter | 1845 | 丸谷才一 | 最もうまく隠すために、わざと人目にさらしておくという盲点。 |
アモンティリャドの酒樽 The Cask of Amontillado | 1846 | 田中西二郎 | 酒通の貴族を幻の酒でつって墓場に閉じ込める。 |
アルンハイムの地所 The Domain of Arnheim | 1847 | 松村達雄 | 続編。 |
メロンタ・タウタ Mellonta Tauta | 1849 | 高橋正雄 | つれづれなるままに記した、軽気球上での架空日記。 |
ちんば蛙 Hop-Frog | 1849 | 永川玲二 | 王の退屈をまぎらわせる道化の復讐。 |
×だらけの社説 X-ing a Paragraph | 1849 | 野崎孝 | 「う」が足りなくなった所で「×」を代用したら変な社説になってしまった。 |
フォン・ケンペレンと彼の発見 Von Kempelen and His Discovery | 1849 | 小泉一郎 | 鉛から金を生成するという化学者の大発見。 |
ランダーの別荘 Landor’s Cottage | 1848 | 松村達雄 | 「アルンハイムの地所」の続きの、幻想的な庭園風景。 |
スフィンクス The Sphinx | 1849 | 丸谷才一 | 突然目撃した怪物の正体は何か。 |
暗号論 Cryptography | 1841 | 田中西二郎 | 基礎的暗号の仕組みと対策。 |
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