美術評論家として活躍中、神経衰弱で入院。長い闘病生活のあいだに二千冊の推理/犯罪文献を読破、分析し、自ら推理作家としてデビューする。古典にも詳しい。
キーワード:
衒学的。貴族趣味。
名探偵ファイロ・ヴァンス。
NY地方検事ジョン・F・X・マーカム。
記述者ヴァン・ダイン本人。
太字作品や★★★★★が特におすすめです。
S・S・ヴァン・ダイン ベンスン殺人事件
原題: The Benson Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1926年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:中島靖侃
価格: 340円
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巨匠ヴァン・ダインの処女作。ウォール街のいんちき株式仲買人の怪死をめぐり、容疑者がありあまるなかから、ヴァン・ダインが創造した名探偵ファイロ・ヴァンスが、その独特の心理分析の手法を駆使して真犯人を指摘する。アリバイにこだわる検察当局の主張をかたっぱしからたたきこわしてゆく明快な論理に、読者は胸がすく思いをさせられよう。本書はアメリカの長篇本格推理小説の黄金時代開幕の契機となった歴史的な記念作で、そのペダンチックな作風はその後に多くの模倣者を生み出したほど革命的なものであった。
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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ベンスン殺人事件 | 1926 | この時期のヴァンスが心理分析を重視するあまり、物的証拠の重要性をまったく無視しているのは、今日の基準からいうとナンセンスだが、手法としてはユニークだ。著者の注と訳注が多いのも特徴で、頁を行ったりきたりするのが、面倒くさい。 |
S・S・ヴァン・ダイン カナリヤ殺人事件
原題: The Canary Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1927年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:真鍋博
価格: 400円
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ブロードウェイの名花<カナリヤ>が密室で殺される。容疑者は四人しかいない。その四人のアリバイは、いずれも欠陥があるが、犯人と確認し得るきめ手の証拠は、ひとつもない。ファイロ・ヴァンスは、容疑者を集めてポーカーをあそび、ポーカーの勝負と通じて犯人を指摘し、ついにベートーヴェンの<アンダンテ>によって決定的証拠をつかむ。
帯、カバー、裏表紙等から引用
ヴァン・ダインの第二作として、ワールド紙が推理小説の貴族階級に属するものと評した傑作で、密室構成とアリバイ作りに新機軸を発揮した謎の興奮は、発売直後七ヵ国語に訳されるほどの評判作となった。初の完訳版!
タイトル | 発表 | 感想 |
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カナリヤ殺人事件 | 1927 | 鍵をかける機械的トリックは、わかってしまえば単純だ。むしろ本作の山場は、犯人の博打うちとしての性格を判断するところである。物的証拠に乏しいので、犯人を自白に追い込み、さらに自殺するまで容認するのは、ヴァンスの情けか。 |
S・S・ヴァン・ダイン グリーン家殺人事件 ★★★★★
原題: The Greene Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1928年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:真鍋博
価格: 400円
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ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。この事件をかわきりに、憎悪、嫉妬、貪欲がうずまくにごりきった空気のなかに、幽鬼のように一家のみな殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。あいつぐ殺人事件に一家の人間は一人、二人と減っていく。とうぜん、残りのなかに犯人がいるにちがいない。しかし、冷徹、神のごときヴァンスも、この難事件を前にしてしだいに焦慮のいろを加えてきた……。
帯、カバー、裏表紙等から引用
二千冊の推理小説を読破したヴァン・ダインが、綿密な計算と構成にもとづいて書きあげた第三作は、一ダースにのぼる彼の全作品中一二をあらそうほどの決定的名作となった。
タイトル | 発表 | 感想 |
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グリーン家殺人事件 | 1928 | いかにして、犯人は疑われるのをかわしたか、がポイント。トリック自体はオリジナルではない。またもヴァンスは、犯人が自殺するのを許す。 |
S・S・ヴァン・ダイン 僧正殺人事件 ★★★★★
原題: The Bishop Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1929年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:真鍋博
価格: 400円
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コック・ロビンを殺したのはだあれ マザーグースの童謡につれて、その歌詞のとおりに怪奇惨虐をきわめた連続殺人劇が発生する。無邪気な童謡と不気味な殺人という鬼気せまるとり合わせ! 友人マーカムとともに事件に介入したヴァンスは、独自の心理分析によって歩一歩と犯人を断崖に追いつめる。「グリーン家殺人事件」とならんでヴァン・ダインの全作品の頂点をなす傑作とされている名編。本書を読まずして推理小説を語ることはできないといっても過言ではない。 帯、カバー、裏表紙等から引用
「わたし」って雀がいった。
「わたしの弓と矢でもって
コック・ロビンを殺したの」
タイトル | 発表 | 感想 |
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僧正殺人事件 | 1929 | 童謡ののって、殺人が繰り返される恐怖。しかし、マザーグースに馴染みのない人間には、あまり衝撃がない。ちなみに、チェスのビショップとマザーグースとは、まったく関係がない。狡猾な犯人を、またも法律にたよらずに、自殺に追い込むヴァンスは、犯人以上に狡猾だ。 |
S・S・ヴァン・ダイン カブト虫殺人事件
原題: The Scarab Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1930年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:真鍋博
価格: 380円
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完全であることを唯一の欠点とする完全犯罪を描いて第一人者であるヴァン・ダインが、推理小説ファンに捧げた第五作。エジプト博物館内で復讐の神を前にして殺されていた死体は、犯人を指摘するあらゆる証拠をそなえていた。しかし、その証拠はあまりにも明確に犯人を指摘しすぎている。わがファイロ・ヴァンスの苦悶は、そこから始まる。法律的には正義の鉄槌をくだしえない犯人に対して、エジプトの復讐の神は、いかなる神罰を用意していたのか? 神を信じないヴァンスは、いかにして神の手を利用したか?
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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カブト虫殺人事件 | 1930 | いつものように、最も怪しい奴は、最も危険でない。最も悪賢い犯人は、裏の裏をかく。ヴァン・ダインの構想力は、まだ大丈夫だ。象形文字の解説も本領発揮だ。 |
S・S・ヴァン・ダイン ケンネル殺人事件
原題: The Kennel Murder Case
著者: S・S・ヴァン・ダイン S.S. Van Dine
発表: 1932年
発行所: 創元推理文庫
カバーアート:真鍋博
価格: 340円
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「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン」が”なにもかも投げ出して、暇があろうがなかろうが読まされてしまう傑作”と激賞した作品。密室に鍵をかけて”自殺”していた男をいかにして殺すか、ファイロ・ヴァンスが、中国の陶器とスコッチテリアという奇妙な取り合わせでもって、その不可解な謎にメスを入れる。アリバイと密室研究に熱をあげる弟、公然とわたしでも殺せると断言する姪、収集された名陶器に垂涎する鑑定家、劣等感を犬によって満足させている友人。犯人はそのうち誰なのか? すべての登場人物が動機と機会をもちながら、しかもそのいずれもが犯罪と直接結びつかない。けがをしたテリア一匹を手がかりとしたファイロ・ヴァンスの、明晰な推理は?
帯、カバー、裏表紙等から引用
タイトル | 発表 | 感想 |
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ケンネル殺人事件 | 1932 | ヴァン・ダインは当初6冊で止めるつもりで、これがその6作目だ。したがって、だんだん苦しくなってきたようで、トリックも非現実的になってくる。 |
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